「生命の種子は、星間空間で形作られ、そこから送られてきたのだと思える」(『生命潮流』)と言ったのは、ライアル・ワトソンだった。
野菜や果実たちを、じっと見つめていると、宇宙空間と星雲を越えてやってきて、地球に根を下ろした生命の種子たちが、
その色あざやかな表皮の奥で、つぶやき、ささやいている強い息づかいを感じるのだ。
キャベツの断面に、ふっと貌が浮かびあがってくる。ひと粒の苺のなかに、聖母子像が立ち現れてくる。
そうした瞬間をとらえて描くことで、生命の種子がもたらすみずみずしい魔法と出会う驚きとよろこびを感じつづけてきた。
私にとって野菜や果実たちを描くという行為は、星間空間から送られてきて、
いま地球に在る生けるものとしての生命の種子のイメージを虚心にとらえ、キャンバスに定着させる作業に他ならない。